情報源は、音楽関係の雑誌だけ。

その情報をもとにして、本当に気になる新譜のレコードを、なけなしの小遣いをはたいて買いに出かけた。そんな時代のぼくたちにとって、映画を見ることは、年に何度もできない特別な体験だった。やがて、テレビが「ロードショー」として、吹き替えの洋画を見せてくれるようになったときは、食い入るように見つめたものだ。

それでも、映画館で見る吹き替えなし（字幕）の映画は、特別な存在だった。

大人になって、レンタル・ビデオが普及し始めて、それまで見たかった映画を、むさぼるように見た。多くの映画が、刺激にあふれていたが、なかでも、日本の時代劇にも通じる雰囲気をもった「マカロニ・ウエスタン」つまりイタリア製の西部劇は、なぜか強烈なイメージを与えてくれた。

後になって、それらの映画が、そもそも黒澤明の作った作品の“パクリ”だったことと、その強烈なインパクトの原因の一つが、映画の中で使われた音楽だったことを知った。

音楽が映画の中の大きな要素として心に残る体験をしたことは、おそらく多くの人にとっても同じだったのだろう。その後テレビで放映された「仕置人シリーズ」のテーマ音楽は、どれもマカロニ・ウエスタンの二番煎じだった。

そんなマカロニ・ウエスタンの初期の多くの作品の音楽を担当したのが、エンニオ・モリコーネだった。モリコーネの作風のなかでも顕著だったのは、シンプルなメロディーを、それまであまり使われない楽器を使って、聞く者の心をわしづかみしたことだった。

モリコーネは、その後、様々な映画音楽を担当するマエストロとして名をはせた。あまりに多くの作品を次々に手がけたため、いくつかの映画で、似たような雰囲気の音楽が使われることも多かった。ボクが手掛けた、あるイベントで、モリコーネの音楽を特集して紹介したことがあったが、その時のアンケートの一つに、「どれも、どこかで聞いたような音楽だった」と書かれていたのが可笑しかった。書いた方は、「モリコーネのどこが凄いのかわからない」というような感想を持ったのだろうが、そうではなく、モリコーネの作りあげた音楽世界が、私たちの生活のいろいろなところまで入り込んでいる証だろう。

今回のライヴでは、モリコーネのほかにも、映画音楽として金字塔を打ち立てた二人の作曲者、ミシェル・ルグランとバート・バカラックをとり上げる。彼らが、いかに映画の中の音楽の存在を高めたか、知る機会になっていただければ幸いです。

(光裕)

この年は、天使やキャンドルといったクリスマスモチーフの手仕事を募集し、その作品を会場に展示させていただき、その空間で、毎日1つの音楽会と、「イギリスとクリスマス」,「ドイツと聖ニコラウス」,「フィンランドとユール」といったテーマで毎日1つのおはなし会とを行いました。

この催しを考えたきっかけは、震災をへて、思いがけない出来事で突如として大切な人を失ったかたがたへ、手仕事のプレゼントをお届けしたいという思いでした。

作り手としてご協力をいただくべく、手仕事作品の寄贈をお願いする募集をし、その作品を、私どもが音楽会などを行う会場に展示して、広くご覧いただいてから、しかるべきかたがたのお手にお渡ししようと思いついたのでした。

どれくらいのご協力をいただけるか、不安がありながらも募集してみますと、それまでの私どもの活動を知ってくださっているみなさまから、お心のこもった刺繍やフェルトによる手芸作品をはじめとして、木工作品や、植物をあしらった作品などが、お手紙とともに次々と送り届けられました。

私どもの思いをご理解くださったことに、ただただ感激でした。

作品をお寄せくださったみなさまには、私どもから、CDやカードをクリスマスプレゼントに添えてお礼としてお送りしました。

すると、その到着のご報告とともに「ぜひ来年からも継続してほしい、自分にも出来ることで、Happy Tocoの活動に参加させてほしい」というお声をいくつもいただきました。

そうしたこともあり、いくつかの作品は、翌年以降の手仕事作品のご参考となるよう、永久保存とさせていただいて毎年展示することにしました。

あとは、里親と暮らす子どもたちや児童養護施設で過ごす子どもたちのもとへ、また突然に大切なかたを亡くされたかたのもとへ、何日かかけてお渡しに伺うことを、この5年続けてまいりました。

ちなみに昨年までは、仙台・茂庭台にある「子どもの村」に、もっとも多くの作品をお贈りしておりました。しかし、理事などが変わり、かつて私どもが賛同したような運営ではないことが分かりましたもので、今年からはまた別のふさわしいお贈り先をご紹介いただいているところです。

クリスマスには、宗教をこえて、1年でもっとも平和を願い、優しい時間を築いてきた歴史があります。

昨年からはこの一連の活動を、クリスマスのもととなった冬至祭「Jul ユール」の名称をもちいて、「Happy TocoとGod Jul」と題しておりますが、生きていることが辛いような、とても厳しい状況にあっても、どうか心に光が灯りますように、という根源的な思いをつよくしてのことです。

今年の「Happy TocoとGod Jul」の詳細については、次号にてご案内いたします。

まずは、作品募集のお知らせをさせていただきます。

ぜひ今年も、ご協力、ご参加のほど、よろしくお願いいたします。

（聡子）